自来也忍法帖

*いしのなかにいる*

田中芳樹 「夏の魔術」

今週のお題「夏に読みたい1冊」

夏の魔術 (講談社文庫)

かつてのベストセラー連発の人気作家も、遅筆であることが影響して過去の人になりつつあり、近年の著作も元々持っていた左翼的思想を全面に出しすぎて鼻につくようになる。(昔は話の面白さでそれがカバーできていた)


そんな田中芳樹の全盛期に色々とシリーズを乱発していたけど、その中の一つ。
挿絵はふくやまけいこ


とある夏の日、列車で旅行していた乗客たちが車両のトラブルに巻き込まれる。
そこからはじまる不可思議で怪奇な現象が多発し始める。
ちょっと素直じゃない、ひねくれた考え方をする大学生の耕平、元気いっぱいの女子小学生来夢。若い二人を暖かく見守る初老の北本さん。彼らがその謎に立ち向かう。


ふやまけいこの柔らかいタッチの絵柄で、中身はけっこうな猟奇的ホラー風味。
田中芳樹といえば、銀英伝だし本人もいまの金づるにしているけど、個人的にはこのシリーズが一番好きだった。
四季に合わせて全四巻だけど、1、2巻は結構早めに出て3巻目はちょっと待たされた。
そして最終巻はとんでもなく間があいて刊行された気がします。